「また歩きたい」「あの街の空気を感じたい」そんなJさんの願いを叶える一日!思い出の通天閣を前に、「ここや!よう来たんや!」とキラキラしながら話される瞬間が溜まりませんでした!懐かしい場所、懐かしい味、98歳の“あの頃”と再会した、優しく力強い時間。今日は、ただの外出支援ではなく、“その人らしさ”を取り戻すための、小さな冒険の記録をシェアできたらと思います!
「あちこち歩き回りたい」から始まった、98歳の小さな旅計画
「行きたい場所とか、見たいもの、ありますか?」何気ないスタッフの問いかけに、Jさんは少し間を置いて、話してくれました。「歩きたいねん、あちこち。ほんで、通天閣とか西成とか、あの辺をまたぐるっと回ってみたいわ」御年98歳。明るい笑顔と、よく通る元気な声が印象的なJさん。
普段からご自身で廊下を散歩されたり、共有スペースを見回ったりととても活動的な方です。でも、「しんどなるからあかんなぁ」と、笑って言いながらも、少しだけ寂しそうにもされるその様子にスタッフのやる気スイッチが発動しました。
長距離の歩行には不安があっても、車椅子なら大丈夫!
無理なく、でもしっかり「その景色」に会いに行けるよう、少しずつ計画を立てることに。目指すは、“懐かしさと再会する通天閣”。Jさんの小さな冒険の始まりです!
通天閣の下であふれた言葉――「ここや!よう来たんや!」
当日出発前!お天気は見事な快晴!Jさんは「なに持っていこ?」と少しそわそわしながら、スタッフと一緒に準備し、タクシーへGO!道中は、車窓から景色を眺めながらリラックスしている様子でしたが、大阪城の屋根が見えた瞬間には「屋根だけ見えた!」と笑顔で楽しそう!
今回、どこに行くかは“お楽しみ”と行先ははっきり伝えず出発したので、サプライズを仕掛けるスタッフもいろんな妄想が広がります。そして、タクシーが通天閣の真下に到着したとき。「ここや!ここへよう来たんや!」Jさんの声が弾けたように響き、目がぱっと輝きました。指を差しながら、「あそこ歩いたなぁ、あっちは昔な……」と、一気に記憶の引き出しが開かれたように話が止まりません。
スタッフは慌ててビデオを回し、その瞬間を残そうと必死でしたが、本人はもう“思い出の街”を歩き出しているかのようで、車椅子を押す手にも、自然と力がこもります。「ただ一緒に行かせてもらう」ではない、「Jさんの心がその場所に立つ」ための夢プロ。それが、ちゃんと叶ったと感じられた瞬間で、すごくうれしかったです!
手裏剣とコーヒー。あの街を味わう優しい時間
通天閣の足元から出発した初めの行き先は、ジャンジャン横丁!派手な看板やにぎやかな通りに、Jさんの目は終始キョロキョロ。「あれなんや?」「昔と変わってへんなあ」――懐かしさと驚きが交じった表情で、次々と“思い出の景色”と再会されていきます。
途中、手裏剣投げの店先で足を止めたJさん。はじめは「恥ずかしいからええわ」と首を振られていましたが、鉄製の重い手裏剣をそっと手に取った瞬間――「やるか?しゃーないなあ!」と笑いながら立ち上がり、ノリノリでやる気満々に。
そこからは驚きの連続!なんと合計8回もチャレンジ。
「下手くそやわ〜」と照れ笑いされつつ、記念品を受け取る姿に、スタッフ一同ほっこりでした。
その後は、小さな喫茶店に立ち寄りました。
「コーヒー飲みたい」と以前から話されていたJさんのために、事前にご連絡し、少し早めに開けていただきました。ご協力いただいたお店の皆さま、本当にありがとうございました。
メニューを手に取ると、「コーヒー!」の一択で迷いなし。「客、おらんで。俺が呼んできたろか!」と周囲を笑わせながらも、コーヒーが運ばれると、静かにスプーンを回しながら「これ、美味しいなぁ」と、ゆったりと味わっておられました。
たわいもない時間でしたが、そのやりとりすべてが、Jさんらしい、優しい時間だったと思います。
まとめ
思い出の場所を訪ねた一日。それは、Jさんにとっての“再会の時間”であり、私たちスタッフにとっても、“想いに寄り添うことの意味”を改めて感じる機会となりました。
ただ景色を見るだけじゃなく、手裏剣を投げて、笑って、コーヒーを味わって――Jさんの表情や言葉の一つひとつが、日常を少しだけ特別に変えてくれる1日でした。
これからも、ご利用者様一人ひとりの「やってみたい」「行ってみたい」を、応援していきたいと思います。