「小さな夢を叶えるお手伝い」プロジェクトは、「ご利用者様の、やってみたい、行ってみたい、食べてみたい」など決して大きい夢でなくても小さくても実行する事で、ご利用者様・家族様・職員・関わる全ての人にとって価値ある想い出に繋げるという想いで発足したプロジェクトです。
~形に残る価値ある想い出 川田編~
川田の家にお住まいの90才の女性Kさんが、今回お手伝いをさせて頂くご利用者様、物語の主役です。
プロジェクトの説明をしてKさんの夢を聞くと「買い物に行きたい、美味しいものが食べたい!」とやりたいことが、あふれ出てきました!!
しかし…季節の変わり目のせいか、Kさんから体調不良を口にされる日や、歯の調子が悪くなられたり…そんな日が続きました。そのたびに「ご一緒に外出できるのを楽しみにしているので元気を出してくださいね」とお伝えすると「そうやなぁ。元気になって買い物に行って、お好み焼きを食べなアカンな、でも行けるかな…」と不安を口にする事も増えました。部屋から出ることなく過ごされることも増えてきたKさんに、少しでも気分転換を図っていただきたい!楽しく外出していただきたい!という気持ちが職員も強くなりました。
そして迎えた当日。
前日の曇り空から一転、Kさんを後押しするような晴天でした。職員はドキドキしながら、Kさんのお部屋をノックしました。「体調はどうですか?今日はお出かけの日ですけど」と職員の声掛けに対して「大丈夫!行けるよ!」と凄く元気に応えてくれるKさん!!(よかった気持ちが伝わった! ! ! !ウルウル)
さあ、待ちに待った出発です。「行く前に記念写真を撮りましょう」とスタッフと写真をパシャリ!「お見合い写真やなぁ」と大笑い!!
「昔はよくひとりでふらりと買物に行ったんや」「うなぎ屋さん、うどん屋さん、お好み焼き屋さん。この3つは昔からある店で、どれも美味しいんや、よく行ったわ」など、タクシーのなかでもお話が尽きません。(あの体調不良を訴えていた時期はなんやったんや…笑)
イオンの看板が見えはじめ、商店が立ち並ぶ通りに入ると、懐かしそうに目線を向けられるKさんの表情は真剣でした。
病院に行かれる事はありましたが、この2年近くの間、外出されていなかったKさん。元々は髪も素敵なパープルに染めておられ、お洒落で外出もお好きな方が、外出が出来ない状況とタクシーの窓から真剣な瞳のなかに楽しみを伺える姿を見ると、何とも言えない感情が込み上げてきました。「絶対に楽しんで頂きたい」そんな気持ちを強く感じているうちに、到着しました。「どこから見ましょうか」とお伺いすると、「あそこやな」と指差し「ズボンが欲しいんや、靴下も欲しいんや」「ばばくさい色はあかん!明るい色が良いんや!」とK さん。「これはどうですか?」とスタッフが勧めると、「これは色気があり過ぎる!」と、Kさんのお好みに合う物を選ぶのに四苦八苦でした(笑) そんなKさんとのやり取りが続き、店内にはKさんと女性職員2人の賑やかな声が響き渡っていました!!
お店や街並みなど変わり過ぎていないか心配でしたが、覚えておられるお店もしっかり健在。嬉しそうなご様子で「ここは変わったなぁ」「ここは前からあるな、昔と一緒や」と町案内をして下さいました。写真をパチリとすると「またお見合い写真撮って」と苦笑い。でも嬉しそうな表情を見てると、写真を撮らずにはいられませんでした。
お昼時「うなぎ食べようか」と、老舗の鰻屋さんへ。「ここにもよく来たんや」とKさん。うな重が到着すると、すぐ蓋を開けパクリとひと口。思わず笑顔がこぼれます。最近、歯の調子が良くないために、食べることを躊躇されていたKさんですが、久しぶりの味にうなぎを完食。「あんたらしっかり食べや!」「振り回したから、あんたらも疲れたやろ!」と、ねぎらいの言葉までかけてくださいました。お店の方も「お元気ですね。おいくつですか?」と話しかけてくださり、嬉しい交流も生まれました。
時間が過ぎるのは早く、気づけばもう14時。たくさんのお菓子や、衣料品、百均グッズの買い物袋でスタッフの両手はいっぱいです!満足そうなKさんは、「楽しかった!面白かった!また行きたい」と嬉しい言葉をおっしゃってくださいました。たくさん撮った写真を見ていただくと「これもらっていいか?」とKさん。「嬉しいわ!裏に日付を書いて!誰と一緒に行ったかも書いといてや!部屋に飾るんや!形に残る想い出や!!」とおっしゃっているのを聞いていて、きっとKさんにとって価値のある形ある想い出になったに違いないと、私をはじめ同行した職員も嬉しくなりました。
私達が楽しんで頂きたい!と思い、その気持ちを受け止めて、たくさんの笑顔を見せてくださったKさんにたくさんの学びと喜びを感じさせていただきました。