介護職は「腰痛離職者」という言葉があるほど、身体に大きな負担がかかる仕事とされています。しかし、正しい知識や技術を取得し介護補助具を積極的に利用することで身体への負担は軽減できます。この記事では、介護業界での腰痛の原因や防止策、ケアーズサポートスタッフによる補助具についての経験談をご紹介します。
介護業界における「腰痛」の原因
介護業界に従事すると、勤務時間の約40%の業務が腰に負担をかけるといわれています。主な腰痛の原因としてあげられるのが、ベッドから車いすへといった入居者さまの移動やベッド上での移乗など、重たい身体を持ち上げる作業が頻繁に発生することです。
1日のうちに複数回行われるおむつ交換など排泄介助のほか、入居者さま全員の入浴介助・食事介助など、介護スタッフの基本的な姿勢が「前かがみ」であることも原因のひとつでしょう。また、車椅子の操作や歩行介助など、身体の不自由な方の介護は常に緊張感を持って行わなければならないことも、腰痛が進行する一因となっています。
入居者さまの介助を無理に続けることで腰痛を起こしてしまうのはもちろんですが、とくに注意が必要なのは休み明けの勤務日といわれています。これまで、腰に痛みを感じていなかった方でも、休み明けに急激な負荷がかかった場合や、不適切な姿勢が原因で激しい腰痛を起こすおそれがあります。これを「災害性腰痛」と呼びますが、日頃の疲れやストレスを貯めていた場合に起こりやすいため、生活習慣を改善することが重要となります。また、定期的な運動で身体の健康を維持しておく必要もあるでしょう。
介護補助具の活用で腰痛を防ぐ
腰痛を起こさないためには、介助する際の姿勢を常に意識すること、正しい知識や技術を取得することがポイントです。正しい姿勢や適度な運動、食生活の改善など、健康的な日常生活を送ることも腰痛予防につながります。さらに腰痛対策の効果を高めるためには「介護補助具」の導入は必須といえます。介護補助具とは、入居者さまの移乗や食事、排泄などを行う際に介護スタッフの負担を軽減し、介護業務の効率化を図ってくれる便利なアイテムです。
介護補助具の種類は実に豊富で、入居者さまの身体状況や環境に合わせたアイテムから、細かな動作を助けてくれるアイテムがそろっています。介護業界で定番の補助具といえば車いすや歩行器、杖、スロープ、手すりなどがあげられます。入居者さまを安全に固定するためのシートやベルト、圧迫による褥瘡を防ぐために、車いすの座面や背もたれに敷くクッション、服や靴を楽に着脱するための補助具もあります。入居者さまの身体機能を保てることはもちろん、車いすやストレッチャー、スライディングシートなどを使用することで安全面の向上が期待できます。
介護スタッフだけでなく介護施設の入居者さまにとってメリットがあるのも介護補助具の魅力でしょう。補助具の活用は、日常生活において自分でできることが増えます。自信や意欲を引き出すことができ、精神的な自立を促せます。たとえば食事のシーンであれば、手指の筋力が衰えた方向けの箸や、食べ物をスムーズに運べるように90度に曲がったスプーンやフォークなどがあります。髪をとかす、爪を切る、歯を磨くといった身だしなみを整えるシーンにも便利な補助具があります。介護補助具は簡単に使用できるものから、知識や技術が必要なものもあるため、補助具の特徴をしっかりと把握したうえで導入しましょう。補助具を適切に使っていくためには、事前に試用をするなど正しい使い方をマスターしておくことも重要なポイントです。
補助具「スライディングシート」の大切さを実感!〇さんの経験談
今回は、ケアーズサポートの介護スタッフOさんによる介護補助具利用の経験談をご紹介します。
介護の仕事をしていると、誰しも1度は「腰痛」を経験したことがあるのではないでしょうか。Oさんは介護の仕事に就いて5年になりますが、これまでに何度か「腰痛」を経験しています。20代前半のときは、腰痛を感じても1日休息を取ることで治癒していましたが、20代後半になってからはそうもいかず、腰痛の治癒までに数日間かかるようになってきました。「自分自身の介助方法が悪いのか?」と考えることもあり、介助方法の基礎を調べて実践をする日々でしたが、なかなか改善することはありませんでした。
そこでOさんは、当社の先輩スタッフに腰痛について相談することにしました。「Aさんの介助後から腰が痛くて…。自分の介助方法が悪いかもしれないので、1度見ていただけませんか?」と正直に先輩へ伝えました。そして、さっそく見てもらうと「これは補助具の正しい使用方法ではないから、介助が楽に感じることができていない。正しい補助具の使用方法をレクチャーしますね!」といわれたそうです。
しかし、正しい補助具の使用方法について指摘された内容は、正直Oさんはいまいち理解できませんでした。先輩のいう補助具を何度も使用したことがありますが、Oさんにとって補助具は「時間もかかるし、とても手間なアイテム」だということ、補助具を使用しても介助が楽になったと感じたことがなかったからです。
Oさんは、入居者さまをベット上で移乗する際に腰痛を起こしました。ベット上の移動で使用する介護補助具は「スライディングシート」と呼ばれるものですが、介護現場でも非常に役に立つ補助具として導入されています。肝心な使い方ですが、入居者さまの身体がベッドの足元側まで下がっていたので、頭元の方向に移動する際ベッドを高くするという基本的なところは実施していました。しかし、同行をした先輩が気になった点というのはベッド上での移動のシーンでした。補助具であるスライディングシートを肩から腰部分の背面に敷いて、入居者さまにはシートの上に寝転んでいただき移乗する作業ですが、正しい使用方法でないと入居者さまの身体はなかなか動かないのです。
Oさんは、これまでただスライディングシートを入居者さまの背中に敷いていたのですが、「肩がスライディングシートに入る位置に敷くことを意識する 」「スライディングシートの向きと位置を重要なポイントとし、骨盤を支点に重心移動を行う」というたったこれだけの方法を取得しただけで、自身の身体に負担をかけることなく介助ができました。
この正しい使用方法を理解できたことで以前より「腰痛」が減少しました。正しい使用方法を理解しているかどうかで、介護スタッフや入居者さまの負担も軽減することができる補助具は、介護業界に必要不可欠なものといえます。Oさんは、自身の身体を守る介助方法や負担軽減についてなど、今後もさまざまな介助方法や補助具について学んでいきたいと話しています。
気軽に相談できる環境&補助具の導入で介護スタッフの技術を向上
東大阪市で3つの介護施設を運営しているケアーズサポートは、正社員はもちろんパートスタッフなど、立場関係なく気付いたことを意見できる環境です。定期的に技術や知識に関する研修を開催しているため、介護の仕事が未経験であってもチャレンジしやすい職場でもあります。介護施設内の雰囲気がよく、気軽に相談できるので「わからない」を放置することなく、介護業務に携われることも強みです。
当社では「改善提案書」という書式を介護スタッフに配布し、「こうすると業務がスムーズ」「介護スタッフにとって効率が良い」など、思いついた方法をいつでも上司に報告できる環境が整っています。介助補助具の導入についても同様に、日々介護スタッフからの改善提案書が届きます。
たとえば、東大阪市川田にて運営している「なごみの家かわだ」からは、お風呂チェアの冷たさと座り心地の改善の改善提案書が送られてきました。提案内容には、プラスチックのお風呂チェアは硬くて冷たく座り心地が悪いのでお風呂用チェアのクッションを導入してほしいとの旨が記載されていました。上司からは、「提案ありがとうございます!購入してください。高齢者の方は臀部の皮膚も薄くなっており、座り心地が悪かったかもしれませんね。小さな積み重ねですが、入居者さまへの配慮がひとつでも多く行き渡る状態を目指しましょう。」とのコメントがありました。このように当社では、自分の意見が上司へ届きやすく、さらに提案についてのフィードバックが非常に丁寧なため「どうせ言っても採用されないだろう」と悲観する必要がありません。
当社では、日頃から補助具としてスライディングシートやスライディングボード、口腔ケアで使用するスポンジブラシなどのアイテムを積極的に利用しております。また「2分で身につく介護動画」と題して、YouTubeにて介護補助具を利用した技術動画も発信しています。当社に勤務している介護スタッフだけでなく、介護に携わるすべての方のスキル向上に役立ててほしいとの思いで運営しております。ほかにも、東大阪市の地域の方を招き介護家族教室を開催して、介護について悩んでいる方々に当社の知識や技術をレクチャーすることで、介護スタッフのさらなるスキルアップを目指しています。
まとめ
介護職の課題のひとつでもある腰痛は、正しい知識と技術の取得、そして介護補助具を使用することで軽減できます。ただし、補助具は適切な使用方法を把握することや目的をしっかりと持って使う必要があります。東大阪市のケアーズサポートは、介護の仕事に関する不安や心配があれば、誰でも気軽に相談できる環境が整っています。当社の働き方にご興味をお持ちの方は、ぜひ1度見学にお越しください。