介護の世界では、「利用者様のために」という言葉が良く使われます。これはもちろん、大切なことです。お困りになられている利用者様のために出来ないことを支援することは介護職員・ヘルパーの使命です。また、利用者様のためにさせて頂いたことに対して「ありがとう」「助かるわ」という感謝の言葉を頂けることは、介護職員・ヘルパーの喜び、やりがいでもあります。
一方、この「利用者様のために」利用者様から頂く「ありがとう」「助かるわ」のために介護職員・ヘルパーは身体を酷使しているケースは決して少なくありません。例えば、介護職員・ヘルパーの職業病ともいえる【腰痛】です。
腰にコルセットを装着して介護をする、腰の痛みが強くなりだしたら針灸に通う、病院に行き痛み止めの注射を打ってもらう、腰の痛みがやわらぐまで仕事をお休みする…そんな介護職員・ヘルパーは決して少なくありません。
また介護では、利用者様(お客様)の身体状況に合わせて、介護職員・ヘルパー(従業員)が支援する方法・ポイントを本来は統一するのが当たり前にも関わらず、多くの介護現場では真逆のことが常態化しているように感じています。
介護職員・ヘルパー(従業員)の介助方法に利用者様(お客様)が「合わせさせられている」状態です。ここには介護職員・ペルパー側に多くの理由が存在します。
例えば、「私は身体が小さいので…」「今までこのやり方でやってきたので…」「介護職員・ヘルパーとして働き始めた職場ではこのやり方と指導されたので…」
このように介護職員・ヘルパーにとっての理由は存在しますが、本来ならば、利用者様(お客様)の身体状況に合わせて、介護職員・ヘルパー(従業員)が支援する方法・ポイントを統一することは他業界では当たり前のことだと我々は考えています。
我々も過去にはこれらのようなことが根底に流れていました。
サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホーム、訪問介護は、利用者様と介護職員・ヘルパーが1:1で介護をさせて頂くことが介護保険制度の原則です。
利用者様はもちろんのこと、介護職員・ヘルパーにとっても【良いやり方】を映像で紹介したり、【利用者様と介護職員・ヘルパーの負担を少しでも軽減するためのツール(スライディングボード・スライディングシート・回転ボードetc)を導入して配布したりと思いつくことにいくつもチャレンジしましたが見事に惨敗、ケアーズサポートの介護職員・ヘルパーには全くと言っていいほど、【良いやり方】【ツール】は浸透しませんでした。
どうすれば、利用者様はもちろんのこと、利用者様を支える介護職員・ヘルパーの身体を守り、職業病といわれる【腰痛】を患えずに、介護職員・ヘルパーが70歳まで現役で働き続けることが出来るのか…。
どうすれば、利用者様(=お客様)の身体状況に合わせて介護職員・ヘルパーが出来る限り同じ支援方法・ポイントで介護や支援、援助が出来るのか…。
ここからケアーズサポートでは、【利用者はもちろんのこと、介護職員にとっても安全で負担のない介護】【利用者様に合わせた介助方法を全介護職員が同じやり方で提供する】をテーマに、【安全・均一・負担なし】をスローガンに掲げ、取り組みを開始しました。
まずは、【利用者はもちろんのこと、介護職員にとっても安全で負担のない介護】【利用者様に合わせた介助方法を全介護職員が同じやり方で提供する】を浸透させることを責務とする職位「技術トレーナー」を任命し、現場で、OJTで、出来る限り介護職員・ヘルパーの実務現場で伴走することからはじめました。
更には、ケアーズサポートの技術トレーナーたちが同じポイントをブラさずに指導するための基準作りにも着手。食事介助、移動・移乗介助、排泄介助において、【利用者はもちろんのこと、介護職員にとっても安全で負担のない介護】【利用者様に合わせた介助方法を全介護職員が同じやり方で提供する】を達成するためのやり方・順番です。
一定の手応えを感じはじめたころに【利用者はもちろんのこと、介護職員にとっても安全で負担のない介護】【利用者様に合わせた介助方法を全介護職員が同じやり方で提供する】ことを、どれだけの介護職員・ヘルパーが習得しているか?を感覚ではなく、実数値で把握をするべきとの考えに至ります。
さらには、これらのことがしっかりと出来ている介護職員・ヘルパーの方には、ケアーズ・サポート株式会社・介護サービスしあわせサポートとして承認し、喜んで頂きたいとも考えるようになります。
これをきっかけに生まれたのが介護技術試験です。介護技術試験はケアーズ・サポート株式会社・介護サービスしあわせサポートで定めた【安全・均一・負担なし】【利用者はもちろんのこと、介護職員にとっても安全で負担のない介護】【利用者様に合わせた介助方法を全介護職員が同じやり方で提供する】の介護方法、介護に関する知識を習得できているかどうかを試験形式で確認するものです。
試験は3カ月に1回行われ、希望者は試験合格を目指します。介護技術試験に合格した介護職員には「ベーシックマスター」の認定(社内資格)を行います。試験は「口腔ケア・移譲・オムツ交換」に関する技術試験と「食事介助」に関する筆記試験で構成されています。試験内容・ポイント・採点方法までを技術トレーナーたちだけで作り上げ、2021年からスタートしました。
介護技術試験を作り上げたものの、技術トレーナーたちは、果たして試験をうけてくれる介護職員・ヘルパーはいるのだろうか…とはじめは大きな不安を抱えていました。しかし思った以上に、向上心のある介護職員・ヘルパー、この理念に共感してくれた介護職員・ヘルパーは多くいました。これまでに3回の試験を実施しましたが、毎回、定員が埋まるだけの受験者がいます。
当初は、2022年3月末までに介護技術試験の合格者である「ベーシックマスター」を50名見出すことを目標としていましたが、2021年12月に実施される介護技術試験ではこの当初目標をクリアできることが見えはじめています。
技術トレーナーたちも明確な目標のもと、やりがいをもって取り組んでくれています。
社員を希望して面接に来て下さった求職者のなかには、「正しい介護技術を身につけたいですし、技術トレーナーという職務にチャレンジしてみたいです」とおっしゃる方もいらっしゃいました。
さらには、ケアーズサポートに入社する前から【腰痛】を発症していた介護職員・ヘルパーは、今ではコルセットを着用することなく、針灸に通うことなく介護実務に励んでくれています。
スタートは単純に【利用者はもちろんのこと、介護職員にとっても安全で負担のない介護】【利用者様に合わせた介助方法を全介護職員が同じやり方で提供する】ことからはじまりましたが、2年を経たずしてここまでこれたことを嬉しく思いますし、これを先導してくれた技術トレーナー、また、介護技術試験を受験してくれた介護職員・ヘルパーの皆さんには感謝でいっぱいです。
今後はまず、社内で介護技術をさらに浸透し、東大阪市の東花園・瓢箪山・川田の住宅型有料老人ホームにて、より高い技術・知識を身につけてもらうための制度改革に着手する必要はありますが、ケアーズ・サポート株式会社、介護サービスしあわせサポートだけにとどまらず、社外の多くの介護職員・ヘルパーの皆さんに【腰痛】を患うことなく、介護に携わり続けて頂くこと、利用者様基準で介護・支援・援助を行うことが当たり前の価値観として頂けるような取り組みにチャレンジしていきたいと考えています。